遊女立ち姿
勝川春章(1726〜92)は、版画では役者絵、肉筆画で
は美人画を得意とした浮世絵師で、北斎が始めて絵を
習った先生である。画姓の「勝川」と名の一字「春」とを与
えられて勝川春朗と名のり、浮世絵界にデビューすること
ができたのも、この春章のおかげであった。
この絵は春章の肉筆画の実力を遺憾なく発揮した傑作
出、吉原の遊女の艶姿を描いたものである。
図上の賛は次のように読める。
応比宣城史鳳姿 まさに比すべし宣城史鳳の姿
迷香洞裏問襟期 迷香洞裏に襟期(心に思うこと)
を問わん
何人打破神鶏枕 何人か打破せん神鶏の枕
題在照春屏上詩 題は在り照春屏上の詩
史鳳とは古代の中国宣城にいた名妓で、客に差をつけ
最上の客には迷香洞や神鶏枕などもちいてもてなしたと
いう。画中の遊女は、そうした気位高い日本の名妓であ
らろうと讃えた賛者「平安 暾桑」とは、春章と同時代の
京都の漢詩人松岡道啓のことである。この絵は描かれて
すぐに京都に運ばれて行ったということが、この画賛によ
って知られる。
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