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次第に高まる旅への憧れと共に、江戸時代後期には名所を絵入りで紹介するいわゆる「名所図会」の刊行が盛んになる。これは江戸時代前期
に編集された名所記(名所案内記)の流れを受けたもので、諸国の名所や街道、寺社などを絵入りで説明したガイドブックのようなものであった。
中でも安永9(1780)年に刊行された「都名所図会」が流行の皮切りとなった。時流に敏感な浮世絵師たちも、各地の景勝地や名物の産地といっ
た人々の興味をかきたてる主題を模索しながら、果敢に名所絵に挑戦している。制作方法も実に様々で、絵師が直接出向いて取材することもあ
れば、各地の名所図会などの出版物を手本に創意を加えた作品も少なくない。これらの多くは名所案内としての役割も果たしたが、中にはこの
「諸国名橋奇覧」のように、敢えてファンタジックな脚色を施した作例もある。
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