喜多川歌麿

潮干のつと

彩色摺狂歌絵本。「潮干のつと」とは「潮干狩りのみやげ」という意味。36種の貝と、初めと終わりに付した関連美人風俗図を、朱楽菅江
(1738-98)と彼の率いる朱楽連の狂歌師たち38名が1名1首ずつ詠む。画工は喜多川歌麿(?-1806)。本書には波模様や「貝合せ図」の
障子に映る手拭いの影の有無等、摺りが異なるものが数種存在するが、展示本には波模様、影ともに無い。本書は安永から寛政にかけ
て蔦屋重三郎が刊行した狂歌絵本の代表的なもので、空摺りや雲母などが施され、当時の最高水準の技術を駆使して制作された華美で
贅沢な作品である。  
  
国立国会図書館
「デジタル貴重書展」
より抜粋し掲載する


3人娘
当時の3美人、いわゆる「3人娘」である。上が
「富本豊ひな」、下左が「高島屋おひさ」、下右が
「難波屋おきた」である。

 浮気乃相
(婦人相学十躰の内)
やはり歌麿の真骨頂は「妖艶」な美人画である。
「浮気の相」と題された上の画を見れば、その点はよ
くわかると思う。世の男性が「背中からむしゃぶりつき
たくなる」ような妖艶さを歌麿は追求し続けたのだった
ばーす屋旅館「浮世亭」より掲載

江戸名所と粋の浮世絵
2007.8.1発行
高島おひさ
(左画像の下左)
江戸名所と粋の浮世絵
2008.8.1発行
歌撰恋之部 夜毎に逢恋
江戸名所と粋の浮世絵
2008.8.1発行
当時全盛美人揃 兵庫屋内花妻
江戸名所と粋の浮世絵
2009.8.3発行
歌撰恋之部物思恋
江戸名所と粋の浮世絵
2009.8.3発行
錦織歌麿形新模様 文読み
江戸名所と粋の浮世絵
2009.8.3発行
袖が浦の亀吉





狐拳三美人
寛政の三美人といわれた高島おひさ、富士屋おたよ、難波屋おきたが
狐拳に興じている様を描く。右は「狐」の高島、中央は「猟師」の難波屋
、左は「庄屋」のおたよである。頭上の提灯のネームから三人の名前が
わかる。なお狐拳は中国から伝わった「本拳」が変化したものと言われ
、お座敷の遊びとして流行を見た。
 寛政4〜5年(1792〜93) 作
寛政二美人の首引き
二人の美女が首引きという座敷遊びに興じている。その奥には二人を
応援する遊女が描かれている。画面には「西の方 なにはやきた 東
の方 たかしまひさ」の文字が見え、右が浅草随身門にあった水茶屋
の看板娘、難波屋おきた、左が両国薬研堀米沢の煎餅屋、高島長兵
衛の長女、おひさで、やはり看板娘であった。
 寛政4〜5年(1792〜93)作
青楼十二時 続 戌ノ刻
 吉原の24時間の遊女の生活を描いた12枚
揃の内の1枚。本図の戌の刻は午後八時から
十時頃の時間帯で、恋文を書いている遊女と
客に頼まれたのか、彼女を呼びに来た禿を描
いている。ここでは、歌麿独得の豊満で、ふく
かな女性の表現が次第に変化して、幾分痩せ
た女性の姿で描かれている。
 寛政7〜8年(1795〜96)作
高名美人見たて忠臣蔵
12枚揃の内の1枚。忠臣蔵のそれぞれの段の
内容に即して、当代の美女を見立てている。こ
こでは二人の美女が描かれており、そのうち一
人は帯の文字から「高尾」であることがわかる。
「仮名手本忠臣蔵」では、初段は鶴岡の供応で
、足利直義が執事の高師直から侮辱を受ける
場面として知られている。
  寛政7〜8年(1795〜96) 作
絵兄弟 女三宮
絵兄弟とは、絵合せ遊びの一つで本絵と駒絵
を対比させ、人物や付随する諸品が似ている
ことが基本となる。表題の「女三の宮」から「源
氏物語」に取材していることが分かり、駒絵で
は六条院の蹴鞠の会で柏木が恋慕した女三の
宮を本作品では遊女に、以下、唐猫を 「ちん」
に、簾を屏風に対応させている。
 寛政10年(1798)頃 作
お染 久松
人形浄瑠璃や歌舞伎狂言で、最も人々に親し
まれ、浮世絵としても多く描かれる。宝永7年
(1710)大阪瓦屋橋での事件、油屋の娘お染
と丁稚の久松の情死に取材している。本図で
はお染が心中の決心を促すかの様に思案顔
の久松の手をとっている。お染の髪の簪には
女性の操を象徴する「五大力」の文字が見え
ている。
 寛政(1789〜1801) 作
実競色乃美名家見
梶原源太 契情梅か枝
恋人同士、男女二人の半身像で描くシリーズ
の一枚で、浄瑠璃の情話に題材をとり、二人
の命がけの恋を表現している。現在「おそめ
久松」「おさん 茂兵衛」など 21種が知られ
ている。ここでは「ひらかな盛衰記」などに脚
色された梶原源太と恋人梅か枝の二人に取
材している。
 寛政(1789〜1801)末期 作
料理をする母娘
大根をおろす娘、それを見守る母親、日常の
一端を絵画化した珍しい作品。歌麿は遊女で
はなく高島おひさ、難波屋おきたなど市井の
美人をモチーフにした作品を多く残しているが
、このような名もない女性を題材にしている事
に新鮮味があり、技法としても刺身を盛ったと
みえる部分に没骨無線の色面で処理した新
工夫が見られる。
 寛政(1789〜1801)末期 作
宝珠を描きおえた紙をもつ
金太郎と山姥の喜び
歌麿は、鳥居清長ともに40点ほどの金太郎の
浮世絵を制作しているが、その意図は清長とは
、いささか異なる。その作の大半は、金太郎と
山姥の組合せであり、山姥は妖艶な美人に描
かれる。従って美人画の一種ということになり、
当代の美人画の名手といわれた面がよく出て
いる。本図でも同じ構想で描かれている。
 寛政(1789〜1801)末期 作
忠臣蔵 二段目
 駒絵の忠臣蔵二段目の場面を、当世の風俗
に見立てた構図になっている。駒絵では、桃井
館に使いに来た大星力弥と小浪、襖の陰には
加古川本蔵らしき人物がいる。本絵では、商家
の娘のもとに恋文か文箱を差し出す若者、そし
て障子の陰では母親がそっと見ている図様にな
っていて、二つの絵が関連している。
 享和2年(1802)作
教訓親の目鑑 浮気者
現在まで10種が確認されている歌麿後期の傑
作の美人画の一枚。女性の上半身が描かれ、
その女性に関する文が添えられている。本図で
は年増の女房か、豊満ではあるが少し肌のた
るんだ女性が、画中には見えない人物に向かっ
て艶然と微笑んでいる。文の最後にある「つつし
むべきハ比類の婦人也」という感じがよく出てい
る。
 享和(1801〜4) 作
青楼仁和嘉全盛遊
豊年太神楽
吉原で8月の最大の行事、仁和嘉(俄)の一場
面を描く。即興の狂言や踊りながら練り歩く様
は人気を呼び、天明、寛政の頃に最高潮に達し
た。歌麿は同じ表題で寛政中期と享和期に2種
類の揃物を描いている。後者は俄踊りの外題と
演ずる芸者の名前が記される。本図は豊作を祈
願あるいは感謝する神楽に基づく俄を取材して
いる。
 享和(1801〜4) 作
「神奈川県立歴史博物館」より掲載。

扇屋内 花扇
(当時全盛似顔揃の内)
 花扇(はなおうぎ)は、吉原遊廓の遊女屋、扇屋の高級
遊女の源氏名です。この名は代々襲名されていますが、
この絵をはじめ、歌麿の描く花扇は、大部分が四代目で
す。四代目の花扇は、書をよくし、酒を好んだと伝えられ
ていますが、寛政6年に客と駆け落ちしてしまいました。
すぐに連れ戻されますが、駆け落ち直後に出されたと思
われるこの絵の後摺りでは、名を出すことを避けてか、
花扇の名が「花」とされています。
喜多川歌麿は、天明・寛政期(1781〜1801)の浮世絵
の黄金時代を代表する絵師で、美人画のシリーズもの
の名作が多数あります。この「当時全盛似顔揃」シリー
ズは、「当時全盛美人揃」と改題されたものを合わせ、
10作品が知られています。
 寛政6年(1794)頃 作
 おかみさん
(咲分ケ言葉の花の内)
「咲分ケ言葉の花」は歌麿晩年のシリーズで、この「お
かみさん」以外に十図ほどの作品が確認されています。
この図は、商家のおかみさんが、手にするきせるにたば
こを詰めながら、ご主人にくどくどと愚痴を言っている姿
を描いています。
今も昔も変わらない折り合いの悪い姑からの嫌みに耐
え、一日気の休まらないところで、亭主と二人きりにな
り、抑えていた不満を発散させているようです。
 享和2〜3年(1802〜1803)頃 作





江戸名所と粋の浮世絵
2007.8.1発行
江戸町一丁目 扇屋内花扇
(画像左)
江戸名所と粋の浮世絵
2008.8.1発行
高名美人六家撰 辰巳路考

『「たばこ と 塩 の 博物館」コレクションギャラリー』より掲載。

ビードロを吹く娘
(婦人相学十躰の内)
若さ溢れる筆致で、人気の絵師となった歌麿の代表作。
当時大流行していた紅色の市松模様の着物に玩具のビ
ードロを描き、世相を反映しながら、若い娘のあどけなさ
を表現してる。『婦女人相十品』は、美人をモチーフに日
常のさまざまなシーンを上品、中品、下品などと分類し
て描いたユニークなシリーズ。
娘日時計
巳の刻
対象の質感描写に腐心した歌麿は,《娘日時計》の揃
いで,顔の輪郭線を取り払い肌の柔らか味を出すこと
を試みた。巳の刻を描いた本図では,ついに鼻梁の線
まで消してしまった。人気絵師の地位に安住せず,工
夫を続ける歌麿の意気込みが感じられる作品である。
 江戸時代作

姿見七人化粧
江戸で評判の難波屋のお北が、整いすぎるほどに整った自
分の顔を、無心に見入る姿を描いた歌麿は、自分の好みか
らだけでなく充分に庶民の要請に応えたつもりであろう。
日常生活のなかでのお北の姿は、小町娘のブロマイド的役
割を果たして余りあろう。
江戸名所と粋の浮世絵
2007.8.1発行
姿見七人化粧

あやめ二美人
お染久松店先の図
歌麿ちりめん絵
江戸八景不忍池の落鳫
茶屋男女の図
松葉屋内粧ひ
書初め

上9図は国会図書館「貴重所画像データベース“錦絵”」より掲載

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